おかん、おとんへ
「奨学金」という借金で大学に行くと後で返済地獄が待っているから、高卒や専門卒で資格を取るのも一手ですね?
おかん、私、国家資格をとるために来年から講座通うねん。
50万ぐらいするねんけど、給付金?っていうのがあって、
ちゃんと出席して、無事に合格したら半額免除になるらしい。
それでも最初は50万払わなあかんし、途中で諦めたら給付金ももらわれへん。
大変な額や。
でもな、ちゃんと一括で払っても生活困窮せん程度には貯金もしてるから大丈夫。
まぁ、ずっと言うてる引越しとかはしばらくお預けやけどな。
でも、この資格は多分、今のうちのキャリアにプラスしたら絶対にいい方向にいくはずやから頑張るわ。
模擬試験とか見てたら、今の知識でも答えられるようなのが半分くらいあったし、
なんか実技試験もあるみたいやけど、ぶっちゃけうち、対人スキルめっちゃあるから、
知識と要領さえ得られれば絶対に受かると思う。
安心してや、努力はうちのおはこや。
おとんも、「あいつは努力だけはする」って言うてたやろ。
だから絶対に大丈夫。
試験は来年の夏やけど、絶対に受かったる。
国家資格やで。
種類は別やけど、妹が大学4年間で学んで一生懸命とった国家資格と同じやつや。
今はこういうの、大学行かんでもとれるねんな。
大学に比べたら費用もぜんぜん安いしな。
ええ時代や。
自分で稼いだお金で、自分の意思で、必要なタイミングで、欲しいからこの資格をとるために頑張る。
絶対にとれる。大丈夫。すごいやろ。かしこいやろ。えらいやろ。
だからな、もうあんたらええ加減、「お姉ちゃんを大学に行かせてあげられなかった」と思うのやめなさい。
確かに、おとんはずっとろくに働かんで、おかんもパートで、
うちが10代の頃の家は大大大貧乏やった。
絶対に全員の肩に貧乏神が座ってた。
そやのに、妹が高校のと気におじいちゃんが死んで遺産ががっぽりや。
そのお金で妹は浪人して、大学行って、国家資格とって、確かにうちよりかけてるお金はずいぶん多い。
そりゃもちろん最初は妬ましかったよ。当時まだ20代前半でしたからね。
でもな、うちはずっと、ちゃんと感謝してるねん。
だって、おかん、うちを専門学校は行かせてくれたやんか。
あんだけお金ない中で、2年ならっていう風に言うてくれたから、
「18歳で社会に出る」という選択をせんですんだんや。
確かに安めのところ選んだけど、奨学金も払ってへんやんか。これはすごいことやねんで。
それに、その専門学校に行きたいって言ったんは、限られた選択肢の中からやったかもしれへんけど「うちの意思」や。
介護福祉士とか保育士とかやなくて、カメラマンとかデザイナーとか安定性の低い系の学科やったけど、
反対もせんと、学資保険とおかんの隠れ貯金使っていかしてくれたやんか。
当時通ってた学科とはちょっと方向性が違うけど、
明らかに専門学校の経験がきっかけで今の仕事を選ぶことができたし、
今、月収27万ももらえてる。おとんやおかんが稼いだことない金額やろ。
自慢の娘やろ???ん??
それやのに、東京に転職した私を、
「東京で働くならちゃんと大学行かせてあげればよかった」とおとんが言うようになった。
おかんもそう思ってるみたいやし、妹も、「おねえちゃんかわいそう」と思ってるみたい。
いや、やめい。
確かに、今周りにおる人たちはみんな学歴コンプレックスとは無縁や。
美大卒ばっかりですわ。実家もみんな裕福ですわ。
でも、別にそれで「あなた専門学校卒業でしょ」みたいな嫌味言われたこともないし、普通にやっとる。
確かに、学びの基盤の差を感じるときもあるけど、「こんなもんかい」ってやつもおるからなぁ。
別に大学行ってなくても普通にやっとる。安心してほしい。
あとな、
うちはとにかく正社員になりたいって理由だけで大好きな地元を離れたから、長期休みは欠かさず地元に帰るで。
ほんまのこといえば、今でも仕事とか安定とかそんなん考えやんと地元に戻って、家族の近所で暮らしたい。
でもな、「お金使ってあげられへんかったから」とかいって何回かに一回、交通費を渡してくるの、やめい。
親孝行したくて外食のお金を出そうとしても、「ええから」って逆におごってくれるのも、やめい。
たまには払わせてや。うちこの中で給料いちばんもらってんねんぞ。
おかん、おとん、ええんやで別に。ほんまに。
うちは人生の選択に後悔なんてひとつもしてへん。
お金もキャリアも十分ある。
ほんでそのお金で生活してな、好きな服買って、外食して、遊んで、貯めてな、
国家資格とろうってなるまできたんや。
めっちゃええ人生やん。
今はな、大学なんか行かんでも、こういうスキルはみにつくねん。
確かに、大学行ったら新卒採用とかあってチャンスは広がるし、
4年間学べる分、とれる資格も、学べる勉強範囲も多いと思う。
でも、行かんでも、こうやって10年くらいたって目指せたりするんや。
十分やで。
ていうかな、
正直、20歳まで育てるまでに十分お金つかってくれてるし、専門でもお金出してくれてるからなあんたら。
だからもう、私はこんなに立派な大人になれたんやから。
おとん、おかん、もうええんやで。
あんたらももう、「お姉ちゃんにお金を使ってあげられへんかった」なんて思わんと、
私がお金出す、言うたらたまにはそれも娘孝行やと思って受け取ってや。
私は結婚してへんから孫の顔も見せられそうにないけどさ、
(そして年々その可能性は高まっていくばかりやけど)
そやからそれぐらいさせてくれ。
おかんが、自分のいろいろを犠牲にして育ててくれたん、ちゃんとわかってる。
おとんは、ちょっと今さら思うなら早くどうにかしてよって思うけど、
それでも今そんな風に後悔してくれたら、もう十分や。
やから、「ごめんね」なんて、もうやめてや。
もっともっと「ありがとう」を聞きたいし、
苦労ばっかりで悲しい顔してた分、そういう顔はもう見飽きたから、
楽しそうにしてるあんたらの顔がみたいんや。
次帰ったら、もう「ごめん」なんて顔やめてや。
ほんで、資格取れたら、給料ぐーんとあげるつもりやから、
なんかええもんでもご馳走させてくださいね。
おかん、おとんへ
もうこれプリントアウトして実家の壁に貼ったらいいんじゃないかな。
2017/11/13 09:14
- 作者: ドロシー・ローノルト,レイチャルハリス,Dorothy Law Nolte,Rachel Harris,石井千春
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